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中小企業の賃金コンサルタント 北見昌朗(北見式賃金研究所所長)の緊急レポート「リーマンショック後の給与動向と22年の改定」をアップしました。

2010年01月19日

中小企業の賃金コンサルタント 北見昌朗(北見式賃金研究所所長)の緊急レポート
「リーマンショック後の給与動向と22年の改定」
ぜひ、お読みください。


平成22年も給与改定の時期を迎えます。新聞紙上は、賃上げに関する記事で賑わっています。
そこで今回は給与に関するとっておきの情報をお伝えしましょう。
それはリーマンショック前とリーマンショック後の給与がどう変化したのかというデータです。
ビックリするぐらいの変化が起きています。データは愛知県の中小企業のもので、著者の独自調査結果です。

 【30歳の一般男性社員の年収は40万円ダウン(全業種)】
まず別表-1をご覧下さい。

別表1.pdf
4本の棒グラフがありますが、左側2本が「30歳の一般男性社員」の給与データです。
一番左が「平成20年度」で、左から2番目が「平成21年度」ですので、その差額が減少額となります。
 
このグラフは、全業種のものです。
年収は442万円→402万円となり、40万円の減。
時間外手当を含めた賃金総額(通勤手当のみ含まず)は30万3000円→27万6000円となり、2万7000円の減。
所定内賃金は24万5000円→24万3000円となり、2000円の減。

このデータでわかる通り、時間外手当および賞与の減が年収ダウンをもたらしました。
これは税引き前の給与ですから、ここから税金とか社会保険料を差し引いたら、いくら残るでしょうか?
時間外手当を含めた賃金総額が27万6000円ということは、手取りが8割だとすれば、22万円になってしまいます。

 【50歳の課長の年収は36万円ダウン(全業種)】
次に別表-1の棒グラフの右側2本をご覧下さい。
これは「50歳の課長」の給与データです。右から「21年度」、20年度」となっています。

このグラフは、全業種のものです。
年収は、702万円→666万円となり、36万円の減。
賃金総額(通勤手当のみ含まず)は、44万3000円→44万7000円となり、4000円の増。
賃金総額がわずかでも上がっていますが、管理職は月給制のため、月次の賃金はあまり下がらなかったようです。
しかし賞与減により、年収はダウンです。

 【年収激減! ガタガタになった自動車部品製造業】
ここまでお伝えしたのは全業種のものでしたが、ここから自動車部品製造業に絞ったデータです。
自動車業界は、急激な生産量の落ち込みにより、休業に追い込まれたところが多かったです。

別表-2
をご覧下さい。
別表2.gifこのグラフは、横軸が年齢で、縦軸が年収(通勤手当含まず)です。
ラインは6本ありますが、上2本が管理職、中2本が一般男性社員、下2本が一般女性社員です。
20年度から21年度にかけての落ち込みを、矢印↓で表示しました。横軸の1目盛りが50万円です。

これをみますと「30歳 一般男性社員」は468万円→384万円となり、84万円減。「50歳 課長」は715万円→649万円となり、66万円減。
これでわかる通り、自動車業界はまさに直下型地震に見舞われたような惨状です。 

 
【大量の賃金明細を集めて作る「ズバリ! 実在賃金」】

この賃金データの元をご説明しましょう。
著者は、中小企業の賃金明細を集めています。大量の賃金データをプロットすることにより、その実際の相場を明らかにするものです。
対象は社員300人以下の中小企業で、正社員のみのデータです。各種経済団体が行っている「モデル賃金調査」(アンケート用紙に自己申告で記入する)とは異なります。
ここに掲載したのは愛知県版で、サンプル数が1万5000人超(20年度版)です。
このほかにも首都圏版、関西圏版などが揃っています。

 【今年の給与改定をどうするべきか?】
さて問題は、今年の給与改定をどうするか?です。
多くの会社は、経営不振にあえぎ、昇給どころではないかもしれません。しかし、著者としては「昇給なし」という結論に賛成できかねます。
前年も昇給をろくにできなかった会社もあると思います。その上、今年も昇給なしでは、若い人が生活できなくなります。

著者は、若い社員の将来が気になっています。このまま昇給なしでは、結婚もろくにできない人が続出しませんか?
ちなみに『平成21年版 少子化社会白書』にこんな記事が載っていたので、引用しましょう。

「2007年における平均初婚年齢は、男性で30.1歳、女性で28.3歳と、第2次ベビーブーム時と比べ、男性で3.1歳、女性で3.6 歳上昇している。また、生涯未婚率は、男性15.96%、女性は7.25%であり、特に男性は、この30年の間に約8倍となっている」

「未婚女性が求める男性の収入と未婚男性の収入を比較すると、東京においては、25?34歳の未婚女性の約7割が男性に400万円以上の収入を求めながらも、25 ? 34歳の未婚男性の約8割の年収は、400万円以下となっており、両者の間にかい離がみられる」

 【"給与仕分け"が必要】
政権が交代して以来"仕分け"という言葉が流行語になりました。
著者は、いま行うべきことは、いってみれば"給与仕分け"だと申し上げたいです。
それは「意味のないもの」を削り、「意味のあるもの」を増やすことです。
例えば、こんなことです。
 ◎政府が「子ども手当」を支給するので、それに対応して家族手当を見直す
 ◎60代の給与は年金併用型に切り替える
 
また給与だけでなく、勤務時間についても見直しの余地があります。
例えば、こんなことです。
 ◎本格的な"変動"労働時間制を採用し、繁忙期は9時間、閑散期は7時間勤務に切り替える。

それから経費の節減についても余地があります。
例えば、こんなことです。
 ◎456月に時間外手当が発生すると社会保険料が上がるので、発生しないように工夫する

要するに、ムダなものはないかと目を皿のようにして探すことです。
そして、その埋蔵金を活かして、昇給の原資に充てるのです。