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東京都の「中小企業の賃金事情」を批評する!/鵜呑みにしたらトンデモナイことになる<11>

東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、管理職・役職者の手当を調査しているが、そこに疑問が−−−

◇ 東京都は、管理職・役職者の定義を平成22年度版から変更した
人事部長  「管理職」に対する手当は、先ほども説明いただきましたが、再度詳しくお願い致します。

北見  そうです。大事なことは、管理職の定義です。東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、過去から調べると、用語の説明に変化があります。平成21年版「東京都 中小企業の賃金退職金事情」をみますと、次のように載っています。
一般労働者の分類
ア  役付者
  係長または同等以上の労働者をいう(一般労働者と同様の賃金規定によって賃金が支払われている兼務役員を含む)。
イ  役付者を除く一般労働者
  1. 役付者以外の正社員 (なお、調査票では「一般労働者」と表記している部分に該当する)
  2. 契約社員(正社員と所定労働時間・所定労働日数が同じだが、雇用期間に定めがある者)


そして22年版「東京都 中小企業の賃金退職金事情」を見ると、次のように載っています。

一般労働者の分類
ア 管理職
  課長・部長等または同等以上の労働者をいう(雇用保険の被保険者になっている使用人兼務役員も含む)。


このように平成22年度版の「東京都 中小企業の賃金退職金事情」と、平成21年度版の「東京都 中小企業の賃金退職金事情」とでは、用語解説が異なっています。統計に非連続性がありますから、要注意です。

人事部長  なんですか? 管理職とか、役付者とか、わかりにくいですね。

北見  役職者といいましても、労働基準法上での管理監督者と、それに該当しない非管理監督者があるということです。労働基準法は、第41条で次の通り定めています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条  この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1. 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2. 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3. 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者

問題は、この「監督若しくは管理の地位にある者」の定義です。それは例のマクドナルド事件以来、社会問題になり、クロズアップされるようになっています。

人事部長  要するに、時間外手当が付く役職者と、付かない役職者という意味ですか?

北見  はい、そうです。

人事部長  ところで、一般的に役職手当はいくらでしょうか?

北見  東京都の中小企業賃金事情(平成23年度版)によりますと、次のようになっています。
os_12.gif


 仮に「課長以上を管理職扱いする」という前提で考えますと、だいたい次のような役職手当になるでしょう。

 os_13.gif






人事部長  なるほど、これが相場ですか。

北見  ただし、この東京都の中小企業賃金事情の管理職手当のデータは、参考にしない方が良いですよ。この東京都の中小企業賃金事情に載っている管理職手当の額にしたら、トンデモナイことになってしまいます。

人事部長  と言いますと?

北見  管理職手当は「時間外手当の代替的な意味」を持っていると思います。一方の非管理職がもらう役付手当は、それを基礎賃金にして時間外手当を払うわけですからまったく異物です。だから北見昌朗は名称を次のように区分する提案をしています。

管理手当(管理職に支給するもの。それ自体が時間外手当の代替の意味を持つ)
役職手当(非管理職に支給するもの。それ自体が時間外手当の基礎賃金になる)

人事部長  へえ、いわれてみれば理解できます。


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