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東京都の「中小企業の賃金事情」を批評する!/鵜呑みにしたらトンデモナイことになる<3>

東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、管理職・役職者の定義を平成22年度版から変更している

◇ 管理職の定義がポイント
人事部長  賃金と一口で言いましても、奥が深そうですね。私のような素人では、言葉の意味もロクにわかりません。基本的な用語の説明からお願い致します。

北見  東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、主な用語について、次のように解説しています。

(1)一般労働者
常用雇用者のうち一般的な所定労働時間が適用される労働者をいい、パートタイム労働者は除かれる。なお、常用雇用者とは、次のいずれかに該当する者をいう。
1. 期間を定めずに雇用している者
2. 1ヶ月を超える期間を定めて雇用している者
3. 平成23年5月と6月にそれぞれ18日以上雇用している者
人事部長  「常用労働者」とは何ですか?

北見  「常用労働者」の定義は、一般的に次のようになされています。

常用労働者とは、次のいずれかに該当する労働者
  1)期間を定めず、または1ヶ月を超える期間を決めて雇われている者
  2)日々または1ヶ月以内の期間を限って雇われている者の内、全2ヶ月にそれぞれ18日以上雇われた者

 *以下の者も常用労働者となる。
  1)重役、理事等の役員でも、部長、工場長等のように、常時勤務して一般労働者と同じ給与規則で毎月給与が支払われている者
  2)及び事業主の家族でも、常時その事業場に勤務し、他の労働者と同じ給与規則で毎月給与が支払われている者

人事部長  ということは、正社員ではい人も一部に含まれているのですね。

北見  はい、そうです。

人事部長  従業員の区分はどうなっていますか?
 
北見  次のように区分されています。
ア  管理職 
     課長・部長または同等以上の労働者をいう(雇用保険の被保険者になっている使用人兼務役員も含む)。
イ  正社員
     期間を定めずに雇用している労働者をいう。
ウ  契約社員
     期間を定めて雇用している労働者をいう。
エ  営業販売系労働者
     営業、販売等に従事する労働者をいう。
オ  事務系労働者
     一般事務、会計事務、営業事務・販売事務等に従事する労働者をいう。
カ  技術系労働者
     機械技術、電気技術、情報処理技術、その他の技術に従事する労働者をいう。
キ  生産系労働者
     生産・作業、運転・運搬等に従事する労働者をいう。
人事部長  その管理職の定義は何ですか?

北見  平成23年度版「東京都 中小企業の賃金退職金事情」では「管理職とは、課長・部長または同等以上の労働者をいう(雇用保険の被保険者になっている使用人兼務役員も含む)」となっています。

人事部長  イマドキは、例の名ばかり管理職問題以来、その管理職の定義の厳格化が問題になっていますね。

北見  そうです。大事なことは、管理職の定義です。東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、過去から調べると、用語の説明に変化があります。平成21年版「東京都 中小企業の賃金退職金事情」をみますと、次のように載っています。 
 一般労働者の分類
ア  役付者
    係長または同等以上の労働者をいう(一般労働者と同様
    の賃金規定によって賃金が支払われている兼務役員を
    含む)。
イ  役付者を除く一般労働者
     1. 役付者以外の正社員 (なお、調査票では「一般労働
        者」と表記している部分に該当する)
     2. 契約社員(正社員と所定労働時間・所定労働日数が
        同じだが、雇用期間に定めがある者)
そして22年版「東京都 中小企業の賃金退職金事情」を見ると、次のように載っています。
一般労働者の分類
ア  管理職
     課長・部長等または同等以上の労働者をいう(雇用保険
    の被保険者になっている使用人兼務役員も含む)。
イ 正社員
     期間を定めずに雇用している労働者をいう。
ウ 契約社員
     期間を定めて雇用している労働者をいう。

人事部長  なんですか? 管理職とか、役付者とか、わかりにくいですね。

北見  労働基準法の第41条を意識してのことだと思います。労働基準法は次の通り定めています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条  この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1. 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2. 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3. 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

問題は、この「監督若しくは管理の地位にある者」の定義です。平成22年度版の「東京都 中小企業の賃金退職金事情」と、平成21年度版の「東京都 中小企業の賃金退職金事情」とでは、用語解説が異なっています。
統計に非連続性がありますから、要注意です。


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