【東京都】 管理職の賃金の相場は?
管理職の賃金の相場 リーマン後にどうなった? 東京都
◇ 課長に昇進させたら賃金が逆に減るので本人が昇進辞退社長 東京都の中小企業です。自分でいうのも何ですが、業界で一番の老舗ですので、社員の平均年齢も高くなっています。社員の若返りが課題です。若手の中で、将来を見込んでいる社員がいます。彼を課長に昇進させたいです。40歳で、現在は係長です。彼の賃金は、現在のところ次のようになっています。

>まず、確認したいのは、係長としての彼の賃金は、東京都の中小企業として、どんなレベルに位置するのでしょうか? 私としては、賃金の面で優遇してきたつもりです。
加納 「ズバリ! 実在 賃金」(首都圏版)の平成22年の賃金データをもとに診断させて頂きます。
首都圏の40歳の一般男性社員の賃金は、次が相場です。これは首都圏(東京都+千葉県+神奈川県+埼玉県)という地域全体のデータです。

上記は、首都圏全体ですが、そこから「東京都」のみを抽出したデータは、次の通りです。

貴社は東京都会社ですから、東京都のデータを参考にして下されば良いです。
社長は、この方について「優遇されてきた」とのことです。この「ズバリ! 実在 賃金」の平成22年の賃金データの中で「中」以上になっていれば良いと思います。
社長 ナルホド、東京都の賃金は、それが相場でしたか。そんな具体的な賃金の額は、初めて知りました。そこで、次に質問したいのは、課長昇進後の賃金です。当社の賃金の規程では、基本給は勤続給、年齢給、職能給によって構成されています。彼は「係長級」でしたので、4等級でした。彼が「課長級」に昇格しますと、5等級になります。それによって、彼の基本給は20000円も昇給します。また、役職手当は、課長の場合は40000円になりますので、その役職手当も大いに昇給します。そこで次のような賃金になります。

しかしながら、時間外手当が出なくなるので、賃金の総額は結局ダウンです。この賃金のダウンを本人に話したら「考えさせて下さい」といってきました。そこで後日返ってきた答えは「課長になりたくないので辞退したい」というのです。
課長に昇進させると、時間外手当が出なくなるので賃金が逆に下がるというのは、当社では昔からそうでしたし、そのことで不満を聞いたことはありませんでした。昇進を本人が断ってきたのは初めてです。どう考えれば良いのでしょうか? 賃金の制度に問題があるのでしょうか?
加納 いわゆるマクドナルド事件以来、管理職の問題はクローズアップされています。「名ばかり管理職」といわれる問題です。
社長 な、名ばかり管理職?
加納 名ばかり管理職とは、十分な権限も報酬も得ていないのに管理職扱いされて残業代を支給されない社員のことです。
社長 名ばかり管理職と聞きますと、会社から管理職としての任命を受けていながら、それにふさわしい自覚をもたない、期待はずれの人物を想像しましたが、そうではないのですね。
加納 確かに、名ばかり管理職といわれても、色々な解釈がありますよね。
社長 ところで、中小企業では、全社員中で、管理職扱いにされているのは、何%ぐらいいるのですか?
加納 「ズバリ! 実在 賃金」の賃金の分析をしてみますと、約15%です。
社長 東京都では、中小企業の管理職の賃金はいくらが相場ですか?
加納 「ズバリ! 実在 賃金」(首都圏版)の平成22年の賃金データをもとに解説させて頂きます。40歳の管理職の賃金は、次が相場です。これは首都圏(東京都+千葉県+神奈川県+埼玉県)という地域全体のデータです。

上記は、首都圏全体ですが、そこから「東京都」のみを抽出したデータは、次の通りです。

社長 ナルホド、東京都の賃金は、それが相場でしたか。そんな具体的な賃金の額は、初めて知りました。大いに参考になります。
◇ 加納のワンポイントアドバイス 役職手当
加納 貴社の賃金の制度は、役職手当の額が低いので、時間外手当が出なくなれば、逆に減収になります。そのような賃金の制度では、労働基準法の遵守が求められる、これからのコンプライアンス時代に通用しにくくなるでしょう。
社長 当社の役職手当の額は低いですか? 他社では、一般的に役職手当はいくらでしょうか?
加納 東京都の中小企業賃金事情(平成23年度版)によりますと、次のようになっています。

仮に「課長以上を管理職扱いする」という前提で考えますと、だいたい次のような役職手当になるでしょう。

社長 なるほど、当社の場合は、部長60000円、課長40000円ですから、ちょっと低いですね。
加納 ただし、この東京都の中小企業賃金事情は、参考にしない方が良いですよ。この東京都の中小企業賃金事情に載っている役職手当の額にしたら、トンデモナイことになってしまいます。
社長 と言いますと?
加納 係長から課長になると、時間外手当が出なくなり、大いに賃金が減額になりますね。
だから賃金の構造がおかしい、間違っています。管理職ならば、課長の手当が小さ過ぎます。非管理職ならば、係長の手当が大き過ぎます。
◇ 加納のワンポイントアドバイス 職能給
加納 それから、貴社は基本給の仕組みにも問題があります。
社長 といいますと?
加納 貴社の賃金の規程では、基本給は勤続給、年齢給、職能給によって構成されています。「係長級」(4等級)の人が「課長級」(5等級)に昇格しますと、職能給が大きくなりますね。その職能給の仕組みでは、基本給がどんどん大きくなってしまうではないですか?
社長 でも、この仕組みは東京の大手コンサルタント会社に作ってもらったものですよ。随分高い費用を払って作ってもらいました。
加納 いつですか?
社長 かれこれ20年前です。バブルの良い時代でいた。
加納 そんな昔は「名ばかり管理職」問題なんてない時代でしたから、それでも通ったかもしれませんが、これからは通用しません。もし管理職として否認された場合は、時間外手当を払うハメになります。その際は、基本給が大きく、役職手当が小さく、という賃金の制度では、トンデモナイ時間外手当の支払いになるでしょう。
◇ 加納のワンポイントアドバイス 職能給
社長 怖い話ですね。新聞を読んでいると、背筋が寒くなります。
加納 私は、社員を管理職にする際には、辞令交付とともに承諾書をもらうようにオススメしています。
社長 承諾書?
加納 管理監督者になるという承諾書です。つまり時間外手当が出なくなることに関する承諾書です。イマドキは、そこまでする時代です。
回答者は
東京都墨田区 加納社会保険労務士事務所 加納 和幸氏
>>【東京都】 中小企業の賃金 何でもQ&A に戻る