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「名ばかり管理職」の解消法、経営コンサルタント北見氏に聞く、昇格時の減収回避を。

権限付与や総数抑制も

 管理職としての権限や待遇がないのに残業代がもらえない「名ばかり管理職」問題。店長を管理職から外し、残業代を支給する動きが外食・小売業界で広がるなど大きな経営課題となっている。労働基準監督署の監視も強まるなかで企業がとるべき対策はなにか。人事・給与制度に詳しい経営コンサルタントの北見昌朗氏に実例をもとに解説してもらった。

 日本マクドナルドに店長への残業代支払いを命じた今年一月の東京地裁判決。北見氏が「日本企業の常識への挑戦だ」と驚いたのは店長の待遇について触れた部分だ。

 判決は、低い評価を受けた店長の年収が五百七十九万円で、一般社員の「ファーストアシスタントマネージャー」の平均(約五百九十一万円)より安いと指摘。「(管理職の)待遇として十分であるとは言い難い」とし、残業代支払いを命じる根拠の一つとした。

 管理職に昇格すると残業代がなくなり、年収が下がるのは多くの日本企業で見られる現象だ。判決はそれを否定した。北見氏は「企業は管理職になっても年収が減らない制度を用意しなければならない」と語る。

 中部地方を地盤とするジャスダック上場の書店チェーン、三洋堂書店は一九九九年から七年間かけた制度改革で、店長と副店長を管理職から外し、残業代を支払うようにした。一般社員となった店長が、管理職である本社の「エリアマネージャー」(課長級に相当)に昇格する時も年収が減らないようになった。

 単純に残業代を支払ったり、管理職の給与を上乗せしたりすれば人件費が膨らむ。同社は勤続年数増加に伴う基本給の上昇ピッチを抑え、ひねり出した原資を残業代と管理職の役職手当の上積みに振り向けた。残業代がなくなることによる落ち込みを役職手当の増額で補うようにしたのだ。

 訴訟を起こされないためには、管理職になったと自覚できる年収を用意する必要がある。給与を変えるのが難しければ賞与を増やす方法もある。

 自覚を持たせる仕掛けとして有効なのが辞令交付だ。中小企業では面倒なことを理由に行っていない例がみられるが、社長など経営陣から新任管理職一人ひとりに辞令を手渡しする。労働基準法が管理職の要件の一つとしてあげる「経営者との一体性」を実感するきっかけになる。

 「経営者との一体性」を認めるのにふさわしい権限を与えることも必要だ。分かりやすいのが採用や配置、考課など人事面での役割を与えることだ。医療法人、徳洲会の人事担当課長が残業代の支払いを同会に求めたのに対し、大阪地裁は一九八七年三月の判決で、看護師募集や配置などの決定権限を持つことを理由に退けた。

 管理職の総数を常識的な範囲にとどめておくことも重要だ。参考になるのが静岡地裁が静岡銀行に出した七八年の判決だ。支店長代理以上を管理職としていたのに対し、「男子行員の約四〇%が労基法の保護を受けなくなってしまうという全く非常識な結論となる」と指摘、支店長代理だった原告への残業代の支払いを命じた。

 北見氏は「コンサルタント契約を結ぶ中小企業などを見ると、管理監督者に相当する管理職は正社員の一五%程度」と語る。四割を切れば安心というわけではなく、同業他社の動向などを見て適正な水準を探る必要がありそうだ。


 北見 昌朗氏(きたみ・まさお) 82年愛知大文卒。95年に「北見式賃金研究所」(名古屋市西区)を設立、人事と賃金のコンサルティング業を営む。社会保険労務士。「製造業崩壊」や「サービス残業・労使トラブルを解消する就業規則の見直し方」などの著書がある。

2008/06/05, 日経産業新聞